2006年 11月 09日
世話焼きカルヴィナ姉さん、の巻 |
「ただいま。」
と、何時も通りに帰宅しリビングへ入るとそこには
「あ、お帰りなさい統夜。」
「ハロー、お邪魔してるわよ。」
「・・・えーと、ただいま、それと、いらっしゃいませ?」
優雅に紅茶を飲んでカティアと談笑していたらしき
カルヴィナ・クーランジュさんが居ましたとさ。
「・・・と、言う事で仕事の都合で偶々こっちに来ててね。」
「成る程」
カルヴィナさんは今、アル=ヴァンと一緒にフューリーで働いている。
事情が事情なのであちらこちらへ飛び回る毎日なのだそうだ。
「折角だからアル=ヴァンも来れれば良かったんだけどね。
生憎今回に限ってオーブで事務仕事に追われてるわ。
・・・書類の山に囲まれて、
"騎士といえど平時はこんなものか"
とかボヤいてたっけね。」
書類の山に埋もれてボヤくアル=ヴァンというのも
中々新鮮というか、珍妙な絵になる気がする。
真面目に"エ=セルダ・シューンの息子"のでっちあげの経緯を話したり、
(このでっちあげがなければ
こうして普通の生活には戻れなかったとつくづく思う。)
逆にオーブからの土産話、逆にこちらの近況話など、
カティアも交えて3人で盛り上がる。
テニアとメルアが出掛けていて居ないのが残念・・・って、アレ?
「カティア、今日テニアとメルアとこれから遊びに行くって
言ってなかったっけ?」
「え・・・嘘、いけない!すいません、私もう出ないと。
カルヴィナ、ゆっくりしていって下さいね
・・・じゃ、後をお願いします、統夜。」
「判った、行ってらっしゃい。」
「またね、カティア・・・二人に宜しく。」
はい、行ってきます、と返事を残して
珍しくバタバタと飛び出していくカティア。
まぁ、久々に会えたから仕方ないよなぁ。
「ふふ、騒がしいのね。」
「ええ、毎日こんなモンですよ。」
紅茶を飲んで一息。
「所でアンタ、カティアとは何処まで行ったの?」
「は、何処までって?」
釣られて紅茶を口に含んだ所で
「決まってるじゃない。
男と女がベットでやる事やったのか、って聞いてるのよ。」
「ンゴホッゲホッ!?」
白山猫さんは、ツイ、と唇の端を釣り上げながら
そんなトンでもない事を聞いてくれやがりました。
「な、なななナニを、いや一体何を言い出すんですか!」
「・・・はぁ、そんな調子じゃ清く正しく交際してそうね。」
「下世話、いや大きなお世話です!」
と、反論するも涼しい顔で何処吹く風か。
「判ってるわよ・・・ただね、統夜。」
「なんすか。」
「ムスっとせずにまぁ聞きなさい。
・・・私は今、幸せなの。」
「はぁ、幸せ、ですか。」
「ええ。
仕事は忙しい、休みを取れる時間も少ない、
お陰でアル=ヴァンとも一緒にあまり居られない。
気付けばシャナ=ミアから相談や愚痴聞きの相手として
一緒に居る時間の方が日によっては多かったりするわ。
挙げ句に・・・
そこにつけ込んでアル=ヴァンを狙う不埒者も居るみたいだし。」
最後の一行の時だけ何処か壮絶な笑顔にならないで下さい、
冷や汗が止まりません。
とは言えそんなこっちにお構いなしにカルヴィナさんは続ける。
「けどね、それでも私は今、幸せなの。
・・・何故だか判るかしら?」
「平和、だからですか?」
それとも充実してるからとか、と問うとノン、と指を振って否定される。
「まぁ、それもあるけれど。
部屋に戻ればアイツがいる、部屋で待っていればアイツが帰ってくる。
そして―――
そうして側に居てくれる相手に、愛する相手に。
"抱かれ"ながら眠るのは私にとってこれ以上無い位幸せなのよ、と。
思わず赤面した俺に艶然と微笑みかけながら
カルヴィナさんはそう言ったのだった。
「私がそうだからカティアもそうか、とか今夜から早速、
とかそう言う話じゃないけどね。
アンタも男としてカティアを物にしたい、ってあるんでしょう?」
「まぁ、その、多少は。」
「なら、そう言う一線を越えた先の幸せ、
っていうのも少しずつ考えて見なさい。
・・・本気で、この先あの子と一緒に生きて行くつもりならね。」
表情から笑みを消し、真剣な表情でそう告げる。
そこには、真摯な想いがあったから。
「判りました・・・少しずつ、考えてみます。」
何をどうしたら良いか全然判らないけれど、
少なくとも返事だけはしっかりと返したのだった。
まぁ、その返事を聞いた山猫女史は
「そうしなさい。
・・・ま、案外向こうはもっと早くから
アンタの物にして貰いたがってるかもしれないけどね。」
と、茶化しながら何処か満足そうに頷いたのだった。
・・・もっともからかわれる方はたまった物じゃないけど。
それより俺は最後の言葉で
"―――貴方の物にして欲しい"
いつぞやの、夜を思い出してそれ所じゃなかった。
「―――それじゃ、そろそろ行かないと時間に間に合わなくなるから。
長居して悪かったわね。」
「そんな事・・・機会があればまた寄って下さい。」
出来れば、テニアとメルアも一緒の時に、
と言い足して玄関でカルヴィナさんを見送る。
「ええ、いずれまた。その時は事前に連絡させて貰うわ。」
「お願いします・・・あれ?」
何だか外から足音が・・・
「「ただいま(です)!!」」
ドカン、と開け放たれたドアから顔を出したのはテニアとメルア、そして
「ただいま・・・二人がカルヴィナに会いたがったので、
帰って来ちゃいました。」
てへ、と笑うカティアだった。
テニアとメルアとの再会の時間は生憎短かったけど
そのせいか学校の長期休暇の際にオーブに招待する、
と言ってくれた。曰く
「これだけ忙しい思いさせられてるんだもの。
その位の配慮と料金くらいむしり取ってやるわ。」
だ、そうな。
そうして何やらカティアに一言二言耳打ちして、
カルヴィナさんは今度こそ颯爽と帰って行った。
「うー、携帯忘れたのは痛かった・・・」
「私もバッテリー切れしてて・・・
けどテニアちゃん、
冬休みにオーブに招待してくれるって言ってましたから、ね?」
名残惜しそうに二人は家の中に入っていく。
カティアは―――あれ、なんかこっち見てる。
「カティア、どうかした?」
「・・・ううん、何でもないです。」
何処か赤い顔でそう言いつつ、家の中に入る。
奥からはテニアが今日の夕飯何ー?と大声で聞いてきて、
メルアがテニアちゃん、それ私の分のチョコです!と抗議の声を上げて。
隣では、カティアが仕方ないなぁ、と溜息をついていて。
まぁ、取り合えず。
線の向こう側がどうなってるか知らないし、
越えるにしてもどうするか見当もつかないけど。
その日が来るまでは一線のこちら側の幸せを十分に楽しもう、そう思った。
・・・のだけど。
「ねぇ、統夜。」
「どした?」
「私は、いつでも良いですから。」
そう告げとパタパタと台所に二人を諫めに向かったカティアを見て、
早くも何かが揺らいだ、ような気がした。
それは、去り際にカルヴィナが囁いていった言葉。
「統夜、貴女を自分の物にしたい、って気持ちはあるみたいね。」
「一線、越えてみたら?」
そう、形の良い唇の端を釣り上げて、
まるで悪魔の誘惑の様に囁いていった言葉。
それは、あまりにも魅力的で。
「ねぇ、統夜―――私は、いつでも良いですから。」
恥ずかしくて、直球は無理だったけれど。
それでも私は自分の素直な想いを、
頼もしくも頼りない、
けれど素敵な私の騎士様にぶつける事にしたのだった―――
___
後書き
別名紫雲さんちの統夜君、初夜フラグを立てるの巻
弟と妹の面倒を見るカルビ姉さんの巻にしたかったのですが、
はて上手く行ったかどうか。
何か姉さんのキャラ違う気がしないでもないけどまぁ良いや。
尚この作中では統夜がラフトクランズ、
カルヴィナがB・ブリガンディを使用してアル=ヴァン生存EDとか
そんな感じのありがち設定の後日談です、多分。
お宅設定はや、つかの方の物を脳内でお借りしてます、感謝。
と、何時も通りに帰宅しリビングへ入るとそこには
「あ、お帰りなさい統夜。」
「ハロー、お邪魔してるわよ。」
「・・・えーと、ただいま、それと、いらっしゃいませ?」
優雅に紅茶を飲んでカティアと談笑していたらしき
カルヴィナ・クーランジュさんが居ましたとさ。
「・・・と、言う事で仕事の都合で偶々こっちに来ててね。」
「成る程」
カルヴィナさんは今、アル=ヴァンと一緒にフューリーで働いている。
事情が事情なのであちらこちらへ飛び回る毎日なのだそうだ。
「折角だからアル=ヴァンも来れれば良かったんだけどね。
生憎今回に限ってオーブで事務仕事に追われてるわ。
・・・書類の山に囲まれて、
"騎士といえど平時はこんなものか"
とかボヤいてたっけね。」
書類の山に埋もれてボヤくアル=ヴァンというのも
中々新鮮というか、珍妙な絵になる気がする。
真面目に"エ=セルダ・シューンの息子"のでっちあげの経緯を話したり、
(このでっちあげがなければ
こうして普通の生活には戻れなかったとつくづく思う。)
逆にオーブからの土産話、逆にこちらの近況話など、
カティアも交えて3人で盛り上がる。
テニアとメルアが出掛けていて居ないのが残念・・・って、アレ?
「カティア、今日テニアとメルアとこれから遊びに行くって
言ってなかったっけ?」
「え・・・嘘、いけない!すいません、私もう出ないと。
カルヴィナ、ゆっくりしていって下さいね
・・・じゃ、後をお願いします、統夜。」
「判った、行ってらっしゃい。」
「またね、カティア・・・二人に宜しく。」
はい、行ってきます、と返事を残して
珍しくバタバタと飛び出していくカティア。
まぁ、久々に会えたから仕方ないよなぁ。
「ふふ、騒がしいのね。」
「ええ、毎日こんなモンですよ。」
紅茶を飲んで一息。
「所でアンタ、カティアとは何処まで行ったの?」
「は、何処までって?」
釣られて紅茶を口に含んだ所で
「決まってるじゃない。
男と女がベットでやる事やったのか、って聞いてるのよ。」
「ンゴホッゲホッ!?」
白山猫さんは、ツイ、と唇の端を釣り上げながら
そんなトンでもない事を聞いてくれやがりました。
「な、なななナニを、いや一体何を言い出すんですか!」
「・・・はぁ、そんな調子じゃ清く正しく交際してそうね。」
「下世話、いや大きなお世話です!」
と、反論するも涼しい顔で何処吹く風か。
「判ってるわよ・・・ただね、統夜。」
「なんすか。」
「ムスっとせずにまぁ聞きなさい。
・・・私は今、幸せなの。」
「はぁ、幸せ、ですか。」
「ええ。
仕事は忙しい、休みを取れる時間も少ない、
お陰でアル=ヴァンとも一緒にあまり居られない。
気付けばシャナ=ミアから相談や愚痴聞きの相手として
一緒に居る時間の方が日によっては多かったりするわ。
挙げ句に・・・
そこにつけ込んでアル=ヴァンを狙う不埒者も居るみたいだし。」
最後の一行の時だけ何処か壮絶な笑顔にならないで下さい、
冷や汗が止まりません。
とは言えそんなこっちにお構いなしにカルヴィナさんは続ける。
「けどね、それでも私は今、幸せなの。
・・・何故だか判るかしら?」
「平和、だからですか?」
それとも充実してるからとか、と問うとノン、と指を振って否定される。
「まぁ、それもあるけれど。
部屋に戻ればアイツがいる、部屋で待っていればアイツが帰ってくる。
そして―――
そうして側に居てくれる相手に、愛する相手に。
"抱かれ"ながら眠るのは私にとってこれ以上無い位幸せなのよ、と。
思わず赤面した俺に艶然と微笑みかけながら
カルヴィナさんはそう言ったのだった。
「私がそうだからカティアもそうか、とか今夜から早速、
とかそう言う話じゃないけどね。
アンタも男としてカティアを物にしたい、ってあるんでしょう?」
「まぁ、その、多少は。」
「なら、そう言う一線を越えた先の幸せ、
っていうのも少しずつ考えて見なさい。
・・・本気で、この先あの子と一緒に生きて行くつもりならね。」
表情から笑みを消し、真剣な表情でそう告げる。
そこには、真摯な想いがあったから。
「判りました・・・少しずつ、考えてみます。」
何をどうしたら良いか全然判らないけれど、
少なくとも返事だけはしっかりと返したのだった。
まぁ、その返事を聞いた山猫女史は
「そうしなさい。
・・・ま、案外向こうはもっと早くから
アンタの物にして貰いたがってるかもしれないけどね。」
と、茶化しながら何処か満足そうに頷いたのだった。
・・・もっともからかわれる方はたまった物じゃないけど。
それより俺は最後の言葉で
"―――貴方の物にして欲しい"
いつぞやの、夜を思い出してそれ所じゃなかった。
「―――それじゃ、そろそろ行かないと時間に間に合わなくなるから。
長居して悪かったわね。」
「そんな事・・・機会があればまた寄って下さい。」
出来れば、テニアとメルアも一緒の時に、
と言い足して玄関でカルヴィナさんを見送る。
「ええ、いずれまた。その時は事前に連絡させて貰うわ。」
「お願いします・・・あれ?」
何だか外から足音が・・・
「「ただいま(です)!!」」
ドカン、と開け放たれたドアから顔を出したのはテニアとメルア、そして
「ただいま・・・二人がカルヴィナに会いたがったので、
帰って来ちゃいました。」
てへ、と笑うカティアだった。
テニアとメルアとの再会の時間は生憎短かったけど
そのせいか学校の長期休暇の際にオーブに招待する、
と言ってくれた。曰く
「これだけ忙しい思いさせられてるんだもの。
その位の配慮と料金くらいむしり取ってやるわ。」
だ、そうな。
そうして何やらカティアに一言二言耳打ちして、
カルヴィナさんは今度こそ颯爽と帰って行った。
「うー、携帯忘れたのは痛かった・・・」
「私もバッテリー切れしてて・・・
けどテニアちゃん、
冬休みにオーブに招待してくれるって言ってましたから、ね?」
名残惜しそうに二人は家の中に入っていく。
カティアは―――あれ、なんかこっち見てる。
「カティア、どうかした?」
「・・・ううん、何でもないです。」
何処か赤い顔でそう言いつつ、家の中に入る。
奥からはテニアが今日の夕飯何ー?と大声で聞いてきて、
メルアがテニアちゃん、それ私の分のチョコです!と抗議の声を上げて。
隣では、カティアが仕方ないなぁ、と溜息をついていて。
まぁ、取り合えず。
線の向こう側がどうなってるか知らないし、
越えるにしてもどうするか見当もつかないけど。
その日が来るまでは一線のこちら側の幸せを十分に楽しもう、そう思った。
・・・のだけど。
「ねぇ、統夜。」
「どした?」
「私は、いつでも良いですから。」
そう告げとパタパタと台所に二人を諫めに向かったカティアを見て、
早くも何かが揺らいだ、ような気がした。
それは、去り際にカルヴィナが囁いていった言葉。
「統夜、貴女を自分の物にしたい、って気持ちはあるみたいね。」
「一線、越えてみたら?」
そう、形の良い唇の端を釣り上げて、
まるで悪魔の誘惑の様に囁いていった言葉。
それは、あまりにも魅力的で。
「ねぇ、統夜―――私は、いつでも良いですから。」
恥ずかしくて、直球は無理だったけれど。
それでも私は自分の素直な想いを、
頼もしくも頼りない、
けれど素敵な私の騎士様にぶつける事にしたのだった―――
___
後書き
別名紫雲さんちの統夜君、初夜フラグを立てるの巻
弟と妹の面倒を見るカルビ姉さんの巻にしたかったのですが、
はて上手く行ったかどうか。
何か姉さんのキャラ違う気がしないでもないけどまぁ良いや。
尚この作中では統夜がラフトクランズ、
カルヴィナがB・ブリガンディを使用してアル=ヴァン生存EDとか
そんな感じのありがち設定の後日談です、多分。
お宅設定はや、つかの方の物を脳内でお借りしてます、感謝。
by osomatusan
| 2006-11-09 19:24
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